【2024年版】IBD白書を公開-炎症性腸疾患患者の実態調査結果

2025年3月03日 [月]

株式会社QLife(キューライフ/本社:東京都港区)は、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)患者さんとその家族を対象とした実態調査を行い、その結果を「IBD白書2024」として発表しました。本調査はQLifeが運営するオウンドメディア「IBDプラス」が2018年から2年に1回実施しているもので、今回で4回目の調査となりました。

■主な調査項目

  • IBD患者さんの重症度・治療の状況
  • IBD患者さんの日常生活、不安要素
  • IBD患者さんの情報収集の仕方、患者さん同士の交流状況

■調査サマリ

    【2024年調査の回答者について】

  • 患者本人が約8割
  • 約7割が本調査に初めて回答
  • 潰瘍性大腸炎65.5%、クローン病34.5%
  • 重症度は「中等症」が最も多い
  • 約8割が指定難病の医療費助成を受けている

    【2024年調査からわかったこと】

  • 使用割合が高い薬剤は、潰瘍性大腸炎では5-ASA製剤、クローン病では生物学的製剤
  • 全体の約7割が現在の治療について「満足」「やや満足」と回答
  • 潰瘍性大腸炎では、生物学的製剤の使用経験がある患者さんで入院経験が少ない
  • 潰瘍性大腸炎、クローン病ともに「最も悩んでいる症状」は下痢
  • 全体の9割が病気のことを学校や職場に伝えている
  • 全体の約7割が日常生活に何らかの影響を感じている
  • 潰瘍性大腸炎、クローン病ともに「将来が不確実」であることに半数以上が悩んでいる
  • 「食事制限がつらい」ことに悩んでいる人は潰瘍性大腸炎よりクローン病で多い

    【過去の調査(2020・2022年)と比較してわかったこと】

  • 従来の調査では「寛解」の回答者が最多だったが、今回は「中等症」が最多
  • 増加傾向の治療は「生物学的製剤」、潰瘍性大腸炎では「JAK阻害剤」も増加傾向
  • 診断時年代「40代以上」の割合が増加傾向
  • IBD症状悪化による入院経験が減少傾向(入院経験ありは、2020年71.2%、2022年66.4%)
  • 患者同士で交流している割合が減少傾向

今回4回目となった本調査ですが、初めて回答した人が約7割だったことから、従来から回答者が入れ替わり、重症度や診断時年齢の傾向が変わったことが推察されました。

また、生物学的製剤の使用割合増加については、2022年以降、在宅自己注射が可能な製剤が発売されるようになったことも背景にある可能性が考えられました。

中高年以上での診断割合が増えた背景には、IBDという病気が認知されるようになったことで、「症状があっても我慢していた人」が体調の異変に気付いて受診するようになったこと、さらにIBDを診ることができる医師が増えて診断がつくようになったことが可能性として考えられました。IBDは10~30代の若年発症が多い病気ですが、これを機に、中高年の患者さん向けの情報発信にも注力していきたいと考えています。

調査結果(一部)

■現在使用中の薬剤名・治療法

最も多く使われているのは、潰瘍性大腸炎では「5-ASA製剤」(73.1%)、クローン病では「生物学的製剤」(63.9%)でした。2番目に多く使われているのは、潰瘍性大腸炎では「生物学的製剤」(33.4%)、クローン病では「5-ASA製剤」(59.8%)、3番目は、潰瘍性大腸炎では「ステロイド」(20.9%)、クローン病では「経腸成分栄養剤」(43.8%)でした。

潰瘍性大腸炎で生物学的製剤を使用していると回答した割合は、2020年22.9%、2022年27.4%、2024年では30%を超える結果になりました。また、JAK阻害薬も同様に、2020年2.4%、2022年4.7%、2024年では11.1%と増加傾向にあることがわかりました。さらに、2023年から開始されたばかりの「腸内細菌叢移植療法」も2人の回答がありました。

生物学的製剤に関して、入院経験の有無と関連するかを解析したところ、潰瘍性大腸炎では、生物学的製剤の使用経験がある人で、入院経験がない人が多い(Fisherの直接法、p=0.000)ことがわかりました。一方、クローン病では同様の傾向は確認されませんでした。

■治療満足度

全体の約7割が「満足」「やや満足」と回答し、「不満」「やや不満」と回答したのは7.0%でした。前回調査同様、潰瘍性大腸炎・クローン病に関わらず、全体的に治療満足度は高い傾向にあることがわかりました。また、治療に満足していると感じている人の割合が有意に高いのは、「女性(71.2%)より男性(79.8%)」、現在の重症度が「中等症以上(68.4%)より軽症以下(80.2%)」、就労形態が、「フルタイム以外(70.1%)よりフルタイム勤務(79.7%)」でした。
(Fisherの直接法:*p<0.050, **p<0.010)

調査概要

目的:IBD患者の治療や生活についての実態把握
対象:IBDと診断された患者および家族
方法:インターネット調査
期間:2024年11月20日~11月30日
実施:株式会社QLife IBDプラス編集部
回答数:606(有効回答者数:562)
潰瘍性大腸炎が65.5%(368人、うち患者本人が86%・319人)
クローン病が34.5% (194人、うち患者本人81.7%・142人)
男性39.3%、女性60.2%

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