2024年7月26日 [金]
株式会社QLife(キューライフ/本社:東京都港区、代表取締役:有瀬和徳)は、キッセイ薬品工業株式会社のスポンサードならびにNPO法人腎臓サポート協会の協力のもと、インターネットを介して募集した血液透析患者を対象に皮膚瘙痒症の実態調査を実施し、その結果の一部が日本透析医学会雑誌 2024年3号(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/57/3/57_111/_pdf/-char/ja)に掲載された。
本調査により、485名の有効回答が得られ、以下について明らかになった。
(有効回答全例:485名)
透析患者ではかゆみが起きやすいことを知っていた患者は75.7%、血液透析導入以降にかゆみを経験したことがある患者は77.9%であった。
(以降、かゆみ経験あり:378名)
かゆみを経験している患者に対して、かゆみの程度を5段階※で調査した結果、日中のかゆみは、0点5.3%、1点17.7%、2点50.3%、3点20.9%、4点5.8%、夜間のかゆみは、0点11.9%、1点23.0%、2点44.4%、3点16.1%、4点4.5%であった。日中と夜間では、日中のかゆみに悩まされたと回答した患者(19.8%)よりも夜間のかゆみに悩まされたと回答した患者(28.6%)の方が多く、どちらともいえない、悩むほどではないと回答した患者は、それぞれ27.0%、24.6%であった。
※かゆみの程度
症状なし(0点)、軽微(1点)、軽度(2点)、中等度(3点)、激烈(4点)
かゆみを経験している患者に対して、最近2週間のかゆみによる生活の質(QOL)への影響を質問したところ、以下の通り、患者は何らかの悪影響を感じており、皮膚への悪影響を感じている患者は約7割に達し、かゆみによるQOLの低下が懸念される結果であった。
透析のかゆみについて誰かに相談した経験および通院している透析施設でかゆみについて聞き取りされた経験を確認したところ、60.6%の患者が相談したことがあると回答し、52.9%の患者が聞き取りされたことがあると回答した。いずれも十分とはいえず、聞き取り経験は、相談経験よりも低い結果であった。
相談していない理由は、「相談するほどのかゆみではないから」38.3%が最も多く、次いで「自分でかいたりしてがまんできるから」24.2%、「かゆみはあるものだと思っているから」22.1%と続いた。かゆみが自制内であるために現状を受け入れてしまっている状況がうかがえた。
かゆみに対する治療状況を調査した結果、生活環境や生活習慣への配慮を含めた何らかの治療やセルフケアをしている患者は55.3%であり、そのうちの87.1%は効果を感じており、悪くなった患者はいなかった。医薬品による治療に限らず、普段の生活におけるセルフケアの重要性を示唆する結果であった。
治療をしていない理由は、「治療するほどのかゆみではないから」49.7%が最も多く、次いで「自分でかいたりしてがまんできるから」23.7%、「透析のかゆみは、治まらないと思っているから」19.5%、「治療できることを知らなかったから」17.2%と続いた。かゆみが自制内であり、治療法を知らずにあきらめている状況がうかがえた。
かゆみ治療を行っている患者の54.1%は治療を負担と感じておらず、50.2%が満足していた。一方で、負担感を感じている患者(29.2%)や治療に満足していない患者(16.7%)が一定数存在していたことから、外用薬の塗布を負担に感じていたり、より効果的な治療法を求めていたりする可能性が示唆された。また、85.2%の患者はかゆみの症状や治療に関心があると回答しており、かゆみへの対処に前向きな姿勢がうかがえた。
大町土谷クリニック 院長 高橋 直子 先生
今回の調査では、中等度以上のかゆみがある患者さんの割合は2割で、これまでのさまざまな調査結果の4割程度と比べると少なくなっており、かゆみの治療法が進歩し成果を上げてきたことがうかがわれます。
しかし、いまだに透析によるかゆみを知らない、医療従事者よりかゆみについて聞き取りや相談の経験がない患者さんが多いことが分かりました。血液透析患者さんの強いかゆみは生活の質(QOL)を不良にするだけではなく、睡眠障害を介して死亡率を高めるなど重要な症状のひとつです。われわれ医療従事者はもっと患者さんへの情報提供や聞き取りを行い、適切な治療やセルフケアの方法を提供していかなければなりません。
大町土谷クリニック 薬剤部 吉澤 拓 先生
最近の血液透析患者のかゆみの実態を知ることができる報告で興味深いデータであると考えます。患者のQOLを4つに分類して調査していますが、約4割から7割が影響あると回答しており、見過ごすことができない合併症であるといえます。
中でも興味深いのは、かゆみを受け入れてしまい相談していない患者や透析そう痒症について知らない患者も相当数いることであり、今後の課題だと思います。そのために、医療従事者も認識を改め、原因が多岐にわたる透析そう痒症に対する学習も必要ですし、患者に対しても医療者側からも啓蒙や声かけ、そして皮膚を観察する必要があると考えます。現在、薬剤による治療成績も上がっており、選択肢も増えています。どうか、悩まずにかゆみについてまずは、相談していただけたらと思います。
■実施概要:
調査対象:18歳以上の血液透析患者
有効回答数:485
調査方法:インターネット調査
調査期間:2022年11月下旬~2022年12月